あらすじ
若きウィリー・ウォンカは世界一のチョコレート店を開くため、街にやってきてチョコを売るが警察に止められてしまい、泊まった宿では騙され地下に強制送還させられ働かされることになる。
純真な男の子としてのウィリー・ウォンカ
「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」はチョコレート狂人で知られるウィリー・ウォンカの若き日を描いた映画です。
あのチョコレート工場を開く前の話だとなると、どうやってあんな偏屈な男になってしまったのか気になるところだが、今回ティモシー・シャラメ演じる3代目ウィリー・ウォンカはこれまでの2作とは違って純真に夢の世界一のチョコレート店を開くことを目指す男の子です。
ジョニー・デップの2代目ウィリー・ウォンカは監督のティム・バートンの作家性もあり父親との話になっていましたが、今作はウォンカと母親の関係が主軸になっています。
実はえぐい物語
ウォンカは街でチョコーレートを売ろうとしますが、すぐに警官に止められてしまいます。
ウォンカを建物の上から見下ろすのは3社でチョコレートの利権を独占しているカルテルの3人。
彼らは警察も教会も(神父がロアーン・アトキンソン!)チョコレートで買収して既得権益を維持しようとします。
さらにウォンカはチョコレート作りしかしらないため、簡単に人に騙されるし、文字も読めません。
安い宿だと思ったら騙され、地下に落とされてしまいます。
このように分かりやすく階級差を画で見せていきます。ポール・キングは悪役でさえ、甘くポップに可愛く描いていくため中和されますが、内容は結構えぐいことをしています。
言わずもがなですが、夢を持つことを禁止された街や階級差があり既得権益が利権を独占し、搾取する側とされる側に分かれている状況は今の世界を表しています。
そんな中でもウォンカは夢を追って、地下で同じように働かされているヌードル(ケイラ・レーン)といった仲間たちと協力して、陽気に情熱と才能でチョコ作りで魔法をかけていきます。
街にチョコを売っていきます。まるでみんな夢を持とうよと言うかのように。
監督ポール・キングと関連作
監督のポール・キングはパディントンシリーズで有名な監督です。
「パディントン」も傑作ですが「パディントン2」はさらに傑作です。
僕は誰でも楽しめるような良質なファミリー映画が好きですが、現代でポール・キングの右に出るものはいないでしょう。
本作を見てもう一生ポール・キングがクオリティの意味で、変な映画を作ることはないのではないかと思いました。
箱庭的な世界観でプロダクションデザインに力を入れているのはウェス・アンダーソンっぽいとこところもありますが、「アメリ」で有名なジャン=ピエール・ジュネに影響を受けているようです。
特に「デリカテッセン」のアパートの中の様子は本作で直接的に影響を与えています。
パディントンや本作のクライマックスの要素も見られます。
あとジョニー・デップの「チャーリーとチョコレート工場」の前日譚というよりはジーン・ワイルダーの「夢のチョコレート工場」の前日譚と言えます。ウンパルンパのデザインや歌はこの映画から引用されています。
「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」」はディズニー映画だ
「夢見ることからすべては始まる」本作は格差もあり、世知辛い世の中に対抗する手段として夢が描かれています。
ウォンカは歌を歌い、動物たちと心を通わせ、はぐれ者たちと協力し、小さき者(ヒュー・グラントのウンパルンパが最高)の助けを得て夢を叶えようとします。さらにヌードルと指切りげんまんでした約束を彼は必ず守ろうとします。
これぞディズニー映画の精神をもった本当の「ウィッシュ」であり「ビリーヴ!」だと言いたくなります。
しかしただの甘い夢物語では終わっていません。ウォンカは世界一のチョコレート店を開く時に、母親がその横にいてくれることを信じていました。
ヌードルのおかげで字が読めるようになったからこその静かで感動的なシーン。誰かの夢を叶えることでウォンカの母親に会いたいと言う夢も達成されたのかもしれません。
ティモシー・シャラメが歌って踊るアイドル映画の側面もあるし、ヒュー・グラント、ローワン・アトキンソン、オリヴィア・コールマンといった癖も実力もある豪華キャストも楽します!
ウンパルンパを松平健が吹替てるのも面白そうです。さすがに「マツケンサンバ」は歌わないと思いますが。
ディズニー映画でヴィランは転落することで退場しますが、ウォンカではどうなるか?最後まで夢を見せてくれる素晴らしいフィールグッドムービーです。