アガサ・クリスティも出てくる虚実入り混じるゆるいミステリー「ウエスト・エンド殺人事件」レビュー

アガサ・クリスティも出てくる虚実入り混じるゆるいミステリー「ウエスト・エンド殺人事件」レビュー

1953年ロンドン、ウエストエンド。アガサ・クリスティの戯曲「ねずみとり」を映画化をめぐって殺人事件が発生!「ウエスト・エンド殺人事件」(原題“See How They Run”)は98分で気軽に楽しめるコメディタッチのミステリー映画ですが、メタ要素多しの箱庭的映画です。(以下ネタバレ)

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フーダニットはどれも同じ?

引用:https://ramune-color0912.hatenablog.com/entry/20221113/1668333600

「フーダニットはどれも皆同じだ」映画の冒頭は「ねずみとり」を映画化しようとしていた監督レオ・コペルニク(エイドリアン・ブロディ)の語りから始まります。

そして「ねずみとり」を例に「フーダニット」もの(誰が犯人か?)の解説をしていきます。例えばある場所に容疑者が集められて、犯人が明かされるなど。

そんな「ねずみとり」の脚本家、プロデューサー、そして演者と関わり合う中で、監督は何者かに殺されてタイトル。ここまでがアバン。この映画自体が「フーダニット」ものということです。


他の「フーダニット」とは何が違うか?

引用:https://jurassicpark.fandom.com/ja/wiki/リチャード・アッテンボロー


どれも同じと殺された監督は言ってますが、本作は他の作品と何が違うか。ひとつは虚実入り混じるストーリーということです。

「ねずみとり」映画化のプロデューサーはジョン・ウルフ。彼はジョン・ヒューストン「アフリカの女王」のプロデューサーという説明がされます。

クレジットはありませんが、IMDbを見ると実際にジョン・ウルフが記載されています。


また「ねずみとり」の舞台版の主役は若き日のリチャード・アッテンボロー。言わずもがなですが、あのリチャード・アッテンボローです。ブライトン・ロックに出ていたという言及もあります

また映画のクライマックスではアガサクリスティの家に集まり、アガサクリスティも出てきて犯人当てが始まります。

このように実名で当時の映画、演劇界の人物が出てくるのが本作の見どころ。でも実名が出てる人は絶対犯人じゃないなとわかってしまいます。例えば「リチャード・アッテンボローが殺人犯でした」となれば大問題なのは誰でもわかります。



映画スタイルはウェス・アンダーソンフォロワー

引用:https://www.indiewire.com/2022/06/see-how-they-run-trailer-saorise-ronan-murder-mystery-1234737574/

監督トム・ジョージ。テレビで活躍してた監督らしく、おそらく映画は初監督作。映画のスタイルは完全にウェス・アンダーソンを意識しているというか影響を受けています。見たら誰でも思うはずです。

プロダクションデザインのレベルはとても高く、色味もウェスアンダーソンっぽいです。音楽はダニエル・ペンバートン!だけどウェス組のアレクサンドル・デスプラ風音楽です。



ウェスアンダーソンはカメラの移動も特徴的ですが、本作はスプリットスクリーンが多用されていて、そこで独自性を出そうとしているのかなと思いました。


シアーシャ・ローナンがかわいい!

引用:https://www.rottentomatoes.com/m/see_how_they_run


他と違う要素?ぶっちゃけシアーシャ・ローナンがかわいい。これに尽きると言っても過言ではありません(笑)

僕は警官のコスプレの趣味はありませんが、シアーシャ・ローナンの警察の制服姿がかわいいです。



あまりストーリーには生かされてませんが、未亡人の2人の子持ちという設定で頑張るお母さんキャラです。

シアーシャ・ローナンはウェスアンダーソンの作品に出てるのもあり、ますますウェス感が出てくるし、バディを組む警部のサムロックウェルはウェス作品に出ててもおかしくないという絶妙なキャスティング。(実際は出てない)そういえばエイドリアン・ブロディもウェス作品出てましたね。



サムロックウェルの警部はちょっととぼけた感じの味わいでキャラもウェスアンダーソンぽい気がしてきました。どっちかというとくたびれてる感じですけど。

こういう探偵バディものだとベテラン警部と実は切れ者の若手という組み合わせがパターンとして考えられますが、本作はシアーシャ・ローナンが別に切れ者って感じではないんですよね。やる気はある感じですが。



一方でサムロックウェル側もホームズとかコロンボとかポアロとかそういう感じの名探偵でもないんですよね。この微妙な塩梅(笑)


キャラやバディの関係はステレオタイプではありませんが、はっきりもしていないので、そこが微妙に感じる人は多いかも知れません。


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結局誰が殺したのか?フーダニット!

引用:https://www.slantmagazine.com/film/see-how-they-run-review-saoirse-ronan/

本作は「史上最大の殺人事件、開幕——」と銘打たれてますが、そんなに大それたものではなく、メタ的な言及や舞台の映画化、劇中劇の劇中劇……ということからどんどん箱庭的な小ぢんまりとした話になっていきます。



急に犯人の話ですが「ねずみとり」が元にした事件の被害者の子で、現在は使用人をしてる青年が犯人でした。


事件が矮小化されたものが舞台になり、そしたら映画にもされそうになっているのが耐えられなくなり、映画を阻止するために殺人を犯したのでした。



「ねずみとり」は今でもロンドンで上演されている超ロングランの舞台だそうです。そういう意味で「史上最大の殺人事件(の舞台)」ということなんでしょうね。


気軽にまったり楽しめるぬるま湯ミステリーコメディとしておすすめです。ディズニープラス、Amazon プライムビデオで配信中。吹き替えはないみたいです

★★☆☆


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「ウエスト・エンド殺人事件」あらすじ、ログライン

1950年代のロンドン、ウエストエンド。大ヒットした舞台の映画化計画が、重要なスタッフが殺害されたことで急遽中止となる。世を忍ぶストッパード警部(サム・ロックウェル)と熱心な新米巡査ストーカー(シアーシャ・ローナン)がこの事件を担当すると、2人は華やかで陰湿な劇場地下の不可解な事件簿に巻き込まれ、自らの危険を顧みず謎の殺人事件を捜査する。



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